目次
イントロダクション....................................... 1
第1部 悲観主義......................... 4
I. 紫式部 ................................. 4
II. クレーブの奥方......................... 15
第2部 愛の形と心の動き....................... 23
I. 主人公たちの描写法
- 妻
a. クレーブ夫人.............................. 24
b. 藤壺 .................................. 25
c. 浮舟 .................................... 26
d. 妻 ................................... 27
2. 恋人
a. ヌムール公......................... 28
b. 光源氏............................... 30
c. 匂宮 .................................. 31
d. 恋人 .................................... 31
3. 夫
a. クレーブ公 ............................... 33
b. 桐壺帝 ....................... 34
c. 薫...................................... 34
d. 夫.................................. 35
II. 愛
1. クレーブの奥方
a. クレーブ夫人とヌムール公の相思愛........ 37
b. クレーブ公のクレーブ夫人に対する愛 . 37
c. クレーブ夫人のクレーブ公に対する感情....... 38
d. ”まなざし“ ................................... 38
2.藤壺譚
a. 桐壺帝の藤壺に対する愛............ 41
b. 光源氏の藤壺に対する愛 ........... 42
c. 藤壺の光源氏に対する愛........... 43
d. 藤壺の桐壺帝の対する感情....... 44
3. 浮舟譚
a. 薫の浮舟に対する愛 ................... 45
b. 匂宮の浮舟に対する愛 ............... 46
c. 浮舟の匂宮に対する愛............... 47
d. 浮舟の薫に対する感情 ............... 47
4. 源氏物語において、愛を作り出す要素................ 48
III. 愛の拒否
1. クレーブ夫人.................................. 50
2. 藤壺 ....................................... 57
3. 浮舟 ......................................... 59
4. 源氏物語における他の話......... 62
第3部 物語の歴史の中で
I. 逸脱 ..................................... 65
II. 場面..................................... 74
III. 登場人物............................... 80
結論 ............................................ 89
参考文献......................................... 93
I. 紫式部 1
「水面に無心に浮かんでいる鳥たちは、一見自由そうに見える。しかし、人の目には見えないが、彼らの足は、水面下で絶え間なく動き続けているのだ。」
この一節は、紫式部日記から引用されたものです。この日記は、彼女自身の個人的な動機からではなく、藤原道長あるいはその娘である中宮(彰子)の命により、一族の栄華を讃えるために執筆されました。 帝の行幸を間近に控え、摂政(道長)は自身の屋敷で豪華な宴を催し、誰もが高揚感に包まれています。 しかし、中宮の女房である紫式部ただ一人だけが、その熱狂に加わることができずにいます。
公式かつ賞賛に満ちたトーンの日記の中に、このような「憂鬱(スプリーン)」の一節を挿入させた悲観主義の源泉はどこにあるのでしょうか?
この悲しみは彼女の精神状態を特徴づけており、疑いようもなく『源氏物語』の創造的エネルギーの源となっています。 物語の序盤、この悲観主義は、帝と桐壺更衣(光源氏の母)、あるいは光源氏と藤壺の恋、そして主人公の追放といったエピソードを通じて、柔らかな哀愁のベールに包まれています。 しかし、そのメランコリックな響きの合間から、物語が進むにつれて増大していく悲劇的な苦渋が透けて見えます。
例えば、帝と光源氏の母の愛に残された唯一の道は、絶望的な苦しみ、すなわち彼女の死でした。 当時の社会において、愛は政治と密接に結びついていました。 権力の均衡を崩さないよう、帝はたった一人の女性を愛することは許されなかったのです。 この厳しい現実を前に、作者はその寵姫を死なせざるを得ませんでした。
- 玉井幸助 校注『紫式部日記』朝日新聞社〈日本古典全書〉、1957年、136?137頁(第19章)。