先週後半からガクンと寒くなりました。秋は芸術に浸りましょう。ルーヴル美術館で行われている、ラファエッロの晩年にスポットを当てる特別展、また、グランパレの20世紀アメリカを代表する画家エドワード・ホッパー展などは見逃せません。ピナコテック・ド・パリの、ゴッホと歌川広重を対峙させる展覧会もおもしろそうです。
常設作品にもぜひ注目してください。独断で選んだこちらは、ルネサンス期にフィレンツェで活躍した彫刻家ジャンボローニャの「メルキュール」。フランス出身(当時はフランドル)でありながら、イタリアで最高権力のメディチ家をメセナにつけた、異色のアーティストです。メルキュールは、翼のついた帽子とサンダル、蛇が巻きつく杖をシンボルとし、旅人、商人、盗人の神、そして他の神々の使者でもある、ローマ神話の神です。足元には、西風の神ゼフィールが吹き上げる風。メルキュールは、まさに軽やかに宙を舞うような空気感の中にいます。ミケランジェロと古代ギリシャのヘレニズム様式彫刻を礼賛したジャンボローニャの、しなやかでリアルな身体表現によって、マニエリスム様式の至上を極めた傑作です。ルーヴル美術館はドゥノン翼の、イタリア彫刻の間にあります。
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