(P.S.)
甘い、サトウキビのお話を読んでいただいている最中に、とんでもない事態が、ボーリュー島を襲っていた。2004年10月から、Tereosという名称で、業界に生存し続けていたBeghin Sayの工場 = ボワット・ブルーが、閉鎖の憂き目に遭う、という話を耳にしたのである。大急ぎで最新ニュースを検索してみたら・・・ :
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ヨーロッパ製糖業への規制の改定、特に、精製に対しての助成廃止により、ヨーロッパ製糖業界の経済状況は、急速に悪化した。この結果、Tereos グループの経営は、大きく減速し、2008年9月30日現在、1千万 Eurosの損失を計上している。
すでに、2年前から赤字経営を余儀なくされていたTereosが、今後、ナントの工場を存続させていくためには、年間生産量を2倍に増やし、就労人員も増強しなければならなかった。現在まで、172人の従業員で、年間、12万トン = 1億5700万ユーロを計上していたナントの工場 = Beghin Sayのボワット・ブルーが、年間生産量25万トンを目指すためには、1千万ユーロの再投資が不可欠だった。
その結果、Tereosは、2008年11月12日、ナント工場の閉鎖を発表した。そして、172人の従業員を、Tereosグループが、フランス国内に有する、9つの製糖工場に再就職できるよう、最善を尽くしながら、2009年の夏までに完全に閉鎖する、というスケジュールになった。
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つまり、私が、このエピソードを連載している真っ最中に、あの、爽やかなボワット・ブルーが、ボーリュー島の景色から、消えてなくなってしまう事態に陥ったのである。長い長い製糖史の流れの中で、1929年の大恐慌を、それぞれに生き抜いてきた、戦国の猛者 = BeghinとSay、その2人の名前を高々と掲げて、ボーリュー島の一部のようになっていた、青くて、白いボワット・ブルーが、来年のサマータイムの頃には、同じくらい青い夏の空に、飲み込まれるようになくなってしまうのだろうか?EUという新しい体制が、重くて大きな車輪を押しながら、やっとのことで軌道に乗ろうとしている矢先に起こった、今回の世界的金融大恐慌が、フランスで6番目の都市 = ナントに、のんびりと浮かんでいたボーリュー島にまで、押し寄せてきたのかもしれない。(2008.11.26)
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