ケイのわんぱく物語
日仏ダブルの小学生ケイ君が送る、パリの子供たちの元気な日常。



セ・サンパ
感じいい!親切!ちょっと贅沢!「セ・サンパ」とパリジャンは表現します。そんなサンパなパリを、ほぼ毎週更新でご紹介しています。
第1回  万華鏡と新年度 2008.10エッセイ・リスト|back|next
  9月、いよいよ新学期が始まりました!今年の新学期はちょっと違う・・・、我が家からピカピカの、新小学1年生が誕生したからです。
 「CP(セーペー)だからもう自分でなんでもする!」ほんとにー?息子のケイはここ最近そればっかり、ずいぶん誇らしげです。
 フランスの児童は、6歳を迎える年の秋に「Cours Preparatoire」と呼ばれるクラスに入学します。7歳を迎える春に小学校に入学する日本の子どもより半年早いのですね。おめでたいことだからと、日本のおじいちゃんから通学用のリュックサックが届きました。ピカピカの真っ黒いランドセルといきたいところですが、こちらで使うノートが24×32センチで日本のB5サイズのノートより大きくて入らないのですね。届いたリュックサックは、キャンバス地のしっかりしたもので、おじいちゃんが地元の老舗かばん屋さんで、サイズを測って見つけてきてくれたもの。ありがとう! ケイは以前まで「スパイダーマンのがいい!」なんて言っていたので、このシンプルで、子どもにはかなりシックな、と思われる新しいリュックはどうかな・・・?と心配したのだけれど、「なんてキレイなカバンなんだろう!」と背負っては中を覗いたり、大満足でした。大事に使ってね。

  夏の休暇前に、通うことになる小学校で校長先生による、新入生の保護者説明会がありました。そのときに渡された「必要文房具リスト」。それを手に握りしめてカルチェラタンの大手文房具屋さんに奔走してきた母。家に帰って来て、改めて買ってきたものを見てみると、筆記具としての鉛筆の少ないこと!たった2本でいいのです。たぶん学校や担任の先生にもよるのかもしれないけれど・・・。あとはボールペンの黒・赤・緑・青。そして黄色の蛍光マーカー、日本の小学生と決定的に違うと思われるのは「アルドワーズ」と呼ばれるホワイトボードとそれに使う専用のマーカーが必要というところでしょうか。今はこんなボードだけれどもその昔は小さな黒板にチョークで書き付けていたのでしょう。思い出したのは「赤毛のアン」の中で「にんじん!」とギルバートにからかわれたアンが、怒り心頭に発して彼の頭にこの小さな黒板を殴りつけて砕いてしまったこと。このボードはプラスチックなのでそう簡単に砕けることはないと思うけど・・・、こんなのを使って勉強するんだなあ。あともうひとつ以外だったのは「さいころ2個」。どうやら算数の授業のために使われるそうなのです。「そんな、さいころなんてどこで買えばいいのかしら?も、もしかしてカードとかゲームを売ってる専門のお店?」けれどこれもすぐに解決、美術用具を買い足すために訪れたBHV(パリのデパートの一つ)の新学期フェアのブースに、ちゃんと棚に数種類、並んでいるではありませんか。それも色とりどり、象牙色のスタンダードなものから緑・青・マーブル模様のピンク・黄色などなど。サイズも小さいのから子どもがちょうど握りしめられる、ほどよい大きさのものまで。やはりこれも必要なものとして定番の文具なのね?!私はケイのために、少し迷った末、青と緑のまるっこい中ぐらいのさいころを、買い物かごにポトンと、振り入れたのでした。今年1年間、あの小さな、でも男の子らしい手でなんども振られることになるのでしょう。

  入学後、改めて担任の先生による保護者会も開かれました。担任のベルナール先生は40代後半ぐらい? 栗色のショートヘアにチュニックとジーンズ、はつらつとした語り口調で気さくな感じの女の先生です。1年間の授業カリキュラムや注意事項、買い足す教材などがひととおり説明されたあと、先生より「何か質問はありませんか?」うーん、えーっと、えーっと、何か聞くべきことはないかしら? 私が考えている間に他のお母さんたちは「どうして理科の授業はないのですか?」「体育の時間にうわばきを持ってこさせたほうがいいのではないですか?」「誕生日会はなさるのですか?」「入学初日の子ども達の様子はどうだったのですか?」等々ぽんぽん飛び出してきます。
フランス学校には国旗がたなびいています。



文房具


保護者会
 それに応答する先生、まさにここはフランスという感じで、「読み書き、算数だけで私はせいいっぱいなのです!このうえもっと仕事しろと?!」「体育の授業は受け持っておりません、だからなんとも言えませんの。」「誕生会ですって?うーん、(とても迷惑そうな顔!)学期ごとまとめてでよろしいですか?」「入学初日?あぁもう怒涛のごとく過ぎていきましたよ」 等々、なんだか率直で飾り気がなくていいのです。
 お母さんたちの猛反対の末、誕生日会は学期ごとではなく、その月の最終木曜日に、保護者の用意によって(これが肝心)、開いても良しと決定。ふぅ、ああ良かった。誕生日会は大事なのです。

  最後に、「罰は与えられるのですか?」そう質問されたお父さんがいました。
 「まさか、まだ小さいのですもの、そんな厳しい罰は与えませんよ」と先生。
 「でももし、ほんとうに言うことを聞かない子がいたらどうなさるのですか?」なんだかやけにしつこいなぁ、このお父さんたら。すると先生はしばらくじっと考えて、手にずっと持っていた「万華鏡」を持ち上げて、(ずっと何かなと思っていたのです。筒形で先に1本だけくるくると回るような棒がついているのです)
 「この万華鏡を渡して、あの教室のすみのイスに座らせて、『この万華鏡を静かに覗いて見ていなさい、そしてもし集中力のある可愛い子どもに戻ったら、自分のイスに戻って来なさい。』と言いますわ。」だって!
 私はなんとなくこの先生が気に入ってしまったのでした。Bonne Rentree !
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