ケイのわんぱく物語
日仏ダブルの小学生ケイ君が送る、パリの子供たちの元気な日常。



セ・サンパ
感じいい!親切!ちょっと贅沢!「セ・サンパ」とパリジャンは表現します。そんなサンパなパリを、ほぼ毎週更新でご紹介しています。
第4回  家族で食べる、ガレット・デ・ロワ 2009.01エッセイ・リストbacknext
 

 「それじゃあ 行ってくるからね、帰りにGalette des Rois(ガレットデロワ)を買ってくるから、みんなで一緒に食べよう」 「わぁ!行ってらっしゃい」
 こんな風に見送られて、1月のある土曜日、私たち夫婦は出かけました。友人宅に夫婦そろってお昼を招かれていたのです。この3年来、我が家ではベビーシッターを雇うことがなくなりました。兄であるラファエルが、その役を引き受けてくれているからです。
 「今頃は二人してスーパーにでも行った頃かな」
 メトロに乗り込みながら夫が言い、「そうねぇ」と私には、兄弟二人が嬉々として、スーパーのかごに、冷凍ピザやチップス、ジュース等を放り込んでいくのが目に見えるようでした。出かける際に小遣いをラファエルに与えておくのです。何か作っておこうか? と私が言っても、「いい、買いに行くから」と二人して答えるのですもの。ケイはお兄ちゃんと留守番するのが大好き! ピザやチップスを食べて、ジュースが飲み放題、テレビ見放題、音楽を大音量にして踊りたい放題、その上ラファエルが持っているPSP(プレイ・ステーション・ポータブル)で、ゲームもさせてもらえるもの!

 「長男が一緒に住みたいと言っているんだ、呼び寄せようと思う。」
 夫からそう告げられたのは、ケイが3才になる年の始めのことでした。「つ、ついに来たか、 親子3人暮らしの蜜月がこれで終わるんだな・・・!」 大いに身構えたのを覚えています。でも・・・前の奥さんとの壮絶な離婚劇のあと、子どもに会う機会すら失ってしまった彼 (奥さんは子ども二人を連れて祖国南米へと帰国したのです。) クリスマスの度に「子どもたちに会いたいなぁ」 と、目をしょぼしょぼさせながら、彼らへのプレゼントを選ぶ夫を、「大丈夫、そのうち絶対に会えるようになるから!」 と励まし続けてきた私。それは私との出会い以前に起こったことだから、彼の過去をも愛そう!と決意していました。 それから、夏が来て、たどたどしいフランス語のラファエルがやって来て、もちろん、私の「お母さん業」は一言で言えるほど簡単ではなかったけれど、今では、ラファエルはすっかりケイのお兄ちゃんになりました。

 「ただいまー! ほら、ガレット・デ・ロワ食べよう!」
 「やったぁ、僕が王様だよ、きっと」
差し出された箱を受け取ると、ケイはすぐにテーブルへと駆けていきました。
 「大丈夫だった?」と私が聞くと、「平気」とラファエルがわざとそっけなく答えます。台所は(に向かうと)食べ終わったあとの食器でぐちゃぐちゃだったけど、・・・でも見ないふり見ないふり、今日は子守りしてくれてたんだから。
 家族でテーブルにつくと、夫がガレットを切り分けていきます。真剣な眼差しでそれを見届けると、ケイはすぐさまテーブルの下に潜りこみました。
 このガレット・デ・ロワは、降誕祭が終わったあとの公現祭 (Epiphanieエピファニー 東方の3賢者による、幼子イエスへの礼拝) を祝うためのお菓子で、サクサクのパイ生地と、アーモンドクリームで作られるお菓子です。中にはfeve (フェーヴ) と呼ばれる小さな陶器の人形が一緒に焼きこまれています。このガレットには金紙で作られた王冠が載っていて、皆でこれを食べるとき、まず一番年少の子どもがテーブルの下に入り、年長の者がガレットを切り分けます。そして、一切れずつ、年少の子どもに指名させてから配るのです。もちろんフェーヴを当てた者が王様に! 金紙の王冠をかぶる人には、その年の幸福が約束されるといいます。フランスでは新年が明けるといっせいに、パン屋さんがこのガレットを売り出します。公現祭の祝日が過ぎても1ヶ月は店頭を飾っているので、我が家ではひと月のあいだ、好んでこのガレットを買ってきては、王様当てゲームをしているのでした。

 「これは誰に?」 夫がガレットの一切れを指して声をあげると、下の声が、「僕の!」と答えます。
 「自分のはいちばんあとだぞ」「あっ、じゃあ、お母さんに」
 「これは誰に?」「お父さん!」
 「これは?」「ラファエル」
 あっ!皆の視線がその一切れに集まりました。小さな陶器の一部がお菓子の中から少しだけ見え隠れしています。
 「最後が(そして)僕の!」 そうケイが言い終えて、テーブルから這いだしてくる直前に、なんとラファエルが三番目と最後の(自分の皿と、ケイの)皿をすり替えてしまいました! 自分の皿に載っている、ガレットを見てケイはにんまーり。

 私たちのような、再婚後にできた家族のことをフランスでは再構成家族といい、カップルの離別の多いこの国では、このような家族は増える一方です。一緒に暮らし始めて3年経ち、私はラファエルに、「ちょっと! あなたの部屋汚いんじゃないの?!」 と小言が言えるようになったし、彼は彼で、上から下までばっちり決めておきながら、私の前で「ぷっ」とおならまでするようになったし、(失礼な!) 時間の流れは家族関係もまろやかに(?)変えてくれているようです。
 食べ終わる前からもう王冠を被っている弟、知らん振りの兄。大小の息子を前に幸せそうにガレットをほおばる夫、そして私。再構成だろうが何だろうが、(と言われなくても)「家族は家族」、そう思うのでした。


今年の冬、パリに久しぶりの雪が降りました。
公園は真っ白!


雪だるまに挑戦!


これがガレット・デ・ロワ!


あっ、何か入っている!


長年かけて集めたフェーヴがこんなに!


子ども用の図書館で見かけた本、「どうやって新しい家族と付き合うか」 思春期の子どもたちも悩んでる?!

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