「たゆたえど沈まず」 パリ市のキャッチコピーだ。
紀元前3世紀頃、セーヌの中洲にケルト族の漁民、パリシイ人が住み始め、その集落が後々パリと呼ばれる街を形成することになるのだが、このキャッチコピーがいつ頃生まれたのかは、よく知らない。多分すごく昔(なんて歴史を無視した表現!)セーヌ川の水運によって発達した街のシンボルとして、紋章を作り出した時にでも考えたのかもしれない。セーヌ無くして、パリは存在しないのである。
そんなセーヌだから、人々と川は常に絡みつづけ、近代になってからは、芸術的対象ともなった。詩や小説や、絵画や音楽や映画が生まれた。「左岸」「右岸」という表現は、現代のパリ人にとっても、単に左右を区別する説明の意味合いだけではない、多くを物語る言葉ともなっている。川岸を意味するquai(「ケ」という発音)という言葉もまた、日常会話にしょっちゅう登場。道路の住居表示の数字も川を起点に始まるなど(ちなみにセーヌに近いほうが若い数字。並行した道は流れに沿って数字が大きくなる)生活の基盤にも利用される。
その中州である、シテとサンルイがパリ人の郷愁でなくして何になるのだろう・・・パリの中で一番住んでみたいところはどこかとフランス人に尋ねれば、スノッブなパリ人は、「島」と答える。
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