夫の書棚に『ロダンの言葉』という書物も見つけたのはいつの頃だったろうか・・・。おそらく大学生の彼が買い、愛読(?)していたその赤いハードカバー(おまけに箱付き!)の本は、昭和44年11月に7版として刷られたものだ。定価450円。その本の最初にあった『遺言』を読んだ時から、ロダンは私にとって忘れられない人となった。
「貴方がたの先人である大家たちを、心をかたむけて愛したまえ。・・・・・しかし、貴方がたの先輩たちをまねることは自戒したまえ、伝統を尊び、そのなかにある永遠に豊饒なもの、すなわち『自然』への愛と誠実とを見ぬくことを心得たまえ。・・・・」
「『自然』が貴方がたの唯一の女神であることを。
自然を絶対に信じたまえ。それが決して醜でないことをかたく信じ、貴方がたの野心を、自然に忠実をまもることにもっぱら限りたまえ。・・・・・芸術家のするどい眸は、『性格』――すなわち、形態のしたに透けてみえる内部の真実――を見出すからである。そしてこの真実こそ、美そのものである。・・・・・」
「辛抱強くあれ!・・・・・芸術家の資格とは、聡明、注意深いこと、誠実、意志、のほかにはない。貴方がたの仕事を、実直な職人のように果たしたまえ。・・・・・」(*ポール・グセル著 古川達雄訳『ロダンの言葉』より |