パリならではのゆっくりとしたリズムに身をゆだねてみたい。
パリジェンヌのお気に入りのグルメスポット
を紹介します。




セ・サンパ
感じいい!親切!ちょっと贅沢!「セ・サンパ」とパリジャンは表現します。そんなサンパなパリを、ほぼ毎週更新でご紹介しています。
パラスホテルで貴族的なランチ
2005.01

Le Meurice
ル・ムーリス
 228, rue de Rivoli 75001 Paris
 Tel: 01-44-58-10-10 8月以外無休


 今回はホテル界の大御所、ホテル・ムーリスのレストラン"ル・ムーリス"でランチをとってみた。ムーリスは数年前に大改装を施し入り口をリボリ通り側にしてから元首や使節団などをどんどん迎えて気を吐いているホテルである。ルーブルやコンコルド広場、ヴァンドーム広場にも近いし内装も素晴らしい(ヴェルサイユ宮殿の王寝室の控えの間のコピーがある)のだが今一日本人には知られていない。いつもどうしてなんだろうと思う。まあ、あまり人に知られないいいものを自分だけで楽しみニヤニヤしているのも人生の密かな楽しみの一つではあるがここは逆に皆様にそういう取って置きの場所を知っていただくところである。けちな根性は捨てよう。ちなみにこのホテルはサルバドール・ダリの常宿だったところでありピカソとオルガの結婚披露宴もおこなわれた。

 ホテルのレストラン、"ル・ムーリス"はヤニック・アレノを去年迎えてからミシュランのガイドブックで2つ星を誇っている。王朝風の内装は大変エレガント。ちょっとおしゃれして行きたい。あまり広すぎないサロンにつかず離れずといった感じでテーブルが置かれている。シャンペンを飲みながらメニューを決める。このシャンペン・メゾンが滅法うまい。黄金色に透き通っていてこれは美味しいぞという予感が働いたがその通りだった。Duval le Roi(デュヴァルルロワというメーカーのだそうだが前に紹介したお菓子屋さんのTholonia(トロニア)の主人の息子さんが勤めているところだったのを思いだした。こういう偶然が面白いし好きである。

 アラカルトでとると結構高くなるので64ユーロのランチメニューにする。5種類のアントレとメイン、3種類のデザートから好きなのを選ぶものだ。私はピストウ風卵のラヴィオル、友人はムール貝のサフラン風味クリームスープを選んだ。いいところの卵料理は素晴らしく美味しいのだがここのはちょっと味がぴんと来ない印象の薄いものだった。ムール貝のほうは美味しいが塩味がきつかったそうだ。アントレのスープがしょっぱいのはここが初めてではない。今は亡きベルナール・ロワゾーのスープも舌が曲がるほど塩味がきつかったのを20年後の今もはっきり覚えている。ワインを飲むことを想定しているからだろうか。

 メインは私がヒメジのビターオレンジソース、友人が鳩のフォワグラ風味をとった。やはりヨーロッパは肉料理がダントツで美味しいと思う。海のものはどうしても日本料理に軍配があがる。ヒメジはトルコで海から上がった飛び切り新鮮なのを素揚げで食べたのが一番美味しかった。ヒメジは鱸と並んで私の一番好きな魚であり柔らかく風味もあるのだが、オレンジソースと今一合わない。でも鳩(ピジョンと言う)のフォワグラソースはそれを補って余りあるものだった。(あまり美味しそうだったので少し食べさせてもらったのだ。)実は私もそれを選びたかったのだが別々に選んで食べ比べしようと言うプロポーズに負けてしまったわけである。鳩は肉自体にしっかり味がありくせもあるのだが、フォワグラのソースが肉のうまさを引き立てくせのほうをうまく隠している。ホースラディシュが効いた野菜の付け合せも美味しい。ピリリとしているがツンとこず風味がある。ロシア料理のペリメニという水餃子のようなものを食べたときもこれが出てきたのを思い出した。

 デザートはバニラ風味ピ−チのロースト、カシスのジャム添えがお勧め。写真を参照していただくとよくわかるが見た目に非常に綺麗でオリエンタルな宮殿の塔のような感じ。美味しさへの予感とともに異国へのイマジネーションをかきたてられ、これはデザートの傑作といえる。ピーチは白桃の一番柔らかなところだけをとりバニラのソフトなフレーバーにマッチしているし、アーモンド入りのビスキュイのカリカリ感と妙なるコントラストを醸し出す。そしてカシスの甘酸っぱいジャムソース(あまり甘くない)が強烈なインパクト。

 というわけで、ヤニックの料理は創造性があり大胆な組み合わせも多いがまだすべてにバランスがとれているというわけではない。味も印象も不揃いである。でもいいのに当たるとすべての欠点を忘れてしまうぐらい美味しい。2つ星だし結構な値段なので批評もきつくなったが今後クレッシェンドで良くなっていくと思う。いいレストランというのはただおいしいと言うだけでなくこんなものどうして作ったんだろうとかこれは一体なんだろうというような新鮮な驚きとか夢を与えなくてはいけないと思う。見た目にも美しくはっとするようなオリジナリティも必要だ。ヤニックの料理にはそれがあるし味の組み合わせにも天才的なものを感じる。今後すべての料理がそうなって欲しいと思うしそれが出来る人だと思う。

 最後になったがワインは赤のサンテステフ、フェランセギュールだけで通した。コストパーフォーマンスのいい美味しいものだった。しめのコーヒーが素晴らしかったので点が上がる。コーヒーとバドワの水も取って一人しめて117ユーロ。このレストランのいいところはサービスが満点なところだ。このごろは星のあるレストランでもサービスが満足いくところは随分少なくなってしまったし慇懃無礼なものも多い。味がいいのも大切だがいい雰囲気で客に満足を与えようとするのはもっと大切である。人は機械ではない。わざわざ外に美味しいものを食べに行ってもぞんざいなサービスではすべてがフイになってしまう。ここは二万円足らずで王侯のようなサービスを受けることが出来る素晴らしいところだ。ホテルのサービスにもいい想像が働く。ル・ムーリスの一格下の"ジャルダン・ディヴェール"にもヤニックシェフの息がかかっていて44ユーロでメニューが味わえる。バーは正当な英国調で先ほどの"Duval le Roi"のシャンペンがある。

 パリらしいパラスホテルのひと時を是非どうぞ。

8月以外無休

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