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セ・サンパ
感じいい!親切!ちょっと贅沢!「セ・サンパ」とパリジャンは表現します。そんなサンパなパリを、ほぼ毎週更新でご紹介しています。
to Chris2003.10 backnext


イラクのテロで逝ったクリスに捧ぐ

8月19日、バグダッドの国連本部がテロの襲撃を受け、22人が亡くなりました。その中にユニセフでただ一人の犠牲者、Chris Klein-Beckmanがいました。彼はその温かい、気さくな人柄と分け隔てをしない公平さで、誰からも愛されていました。コソヴォ事務所で私とは部屋が隣同士だったせいもあり、よく気が合って、一緒に仕事をしたり、悩みを打ち明け合ったりした仲でした。夜になっても何人か残業している時など、近くに飲みに行く所とてないので、よくクリスの部屋に皆で集まって、ワインをあけたりしたのも、今は悲しい思い出です。プロジェクトがうまくいった、とか、レポートが仕上がったとか、プロポーザルに出資者が見つかったとか、誰かの誕生日だとか、口実はいろいろでしたが、要はなんとなく人淋しくなった時にそんな気晴らしを設けていたのです。クリスの部屋にはそんな、皆が気軽に集まれる雰囲気がありました。

コソヴォの前の任地、エチオピアで結婚したのですが、奥さんはアディスアベバの国連事務所で働いていたので、年に何回かしか一緒に過ごせない、そんな不自由な生活でした。結婚後いくらも経っていなかったので、さぞ淋しかったろうと想像できます。

若いけれどとても有能で将来を嘱望されていました。とりわけ、分析能力に優れ、超一級のレポートには本当に感心したものです。 イラク問題がまだ大きな話題になる前から、クリスはこれからイラクが大変なことになる、と話していました。そして、その予想通り、イラクに戦争が始まろうとしていた頃、自ら進んでイラクに出かけていきました。あんなに張り切っていたのに、32歳でこれから、という時に、返す返すも惜しい人でした。

イラクは、そして世界の情勢は、まだまだ混沌として、先が見えません。でも、いつか平和が来るよう、あの世から見守っていてください。

ユニセフ コソボ 箱山富美子

コソヴォの職員との”家族の写真”。
誰からも、とりわけローカル職員から、敬愛されていた。
コソヴォからイラクに出発する日。
張り切って颯爽と旅立っていった。
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