パリで活躍する素敵な方々にインタビューし、それぞれの「モンパリ」をお聞きします。



セ・サンパ
感じいい!親切!ちょっと贅沢!「セ・サンパ」とパリジャンは表現します。そんなサンパなパリを、ほぼ毎週更新でご紹介しています。
パリで育ち、世界に羽ばたく 
  その1 パリの音楽学校時代 2006.05
   今、最も注目されている若きヴァイオリニストの一人、パリ育ちの山田晃子さん。彼女がどのようにパリで音楽と親しみ、音楽家として育って来たのか? そして、忙しい演奏旅行の合間に過ごすパリでの日常生活についてお聞きしました。

山田晃子さん
  1986年東京生まれ。パリ国立音楽院卒。3歳よりヴァイオリンを始める。1994年よりパリ在住。2000年13歳でパリ国立音楽院入学。2002年ロン・ティボー国際音楽コンクールで史上最年少優勝。2005年ドイツ・オスナブルック音楽賞受賞。欧州各地、日本を中心にリサイタル、室内楽、オーケストラとの共演など幅広い演奏活動を行っている。
2007年演奏会予定はこちら
 ■ Interview   

1、 3歳からバイオリンをはじめられたそうですが、バイオリニストになりたいと思いはじめられたのは何時頃ですか?
  インタビューでよくこの質問を受けますが、バイオリニストになろうとか、なりたいと特に思ったことはこれまでありません。バイオリンという楽器を媒体に自分の音楽や自分自身を表現できることは素晴らしいことだと思っています。
  小さい頃から、鈴木メソードでバイオリンを教えていた母のレッスンを身近に見ていて、自分も生徒さんたちと同じように楽器を持ちたいと母に頼み、3歳でバイオリンを始めました。ちょうど父の転勤で私たち家族がロンドンに住んでいた頃です。4年間のロンドン滞在の後帰国、日本は小学校1年生の1年間だけで、再び父の転勤でパリに向かいました。その頃から、バイオリンのおけいこは日課でしたが、大きくなったらバイオリニストになろうとは思いませんでした 。

2、パリに移られて、現地の学校にはすぐに慣れましたか?
  ロンドンでずっと現地校に通っていたせいか、外国の学校の環境には慣れていたかも知れません。パリに来てすぐに8区の公立小学校に入りました。 この学校には音楽コースがあって、毎日午前中は公立小学校で通常の勉強、給食の後、音楽コースのクラスは全員パリ市立音楽院(C.N.R. DE PARIS)に移動し音楽の勉強をするシステムでした。最初はチンプンカンプンだったフランス語も自然に話せるようになりましたし、友達もたくさんできました。

3、 音楽コースをご自分で選ばれたのですか?そこではどんな勉強をなさいましたか?
  パリに来た時はまだ7才の時で何もわかりませんでしたから、進路はやはり両親の考えでした。父が用意していた学校のリストの中に、たまたまこの音楽コースがありましたので、バイオリンという特技を生かしてみようと、選抜試験を受けました。  
 市立音楽院では、バイオリン実技をはじめソルフェージュ、室内楽、オーケストラ・ワーク、また、ロストロポービッチのマスタークラスなどで勉強し音楽の基礎を学びました。バイオリン実技では、バッハの無伴奏ソナタやパルティータ、イザイのソナタなど古典から近現代の曲まで幅広く課題を与えられると同時に、シュラーディック、セブシック、ガラミアンなどの教本、また、カール・フレッシュの音階体系を勉強しました。協奏曲ではブルッフ、メンデルスゾーンなど日本でも馴染みのある曲の他に、ドベリオ、ルドルフ・クロイツェル、ローデ、ヴィオッティなどの曲でフレージングやアーティキュレーションを学び、室内楽やアンサンブルの素晴らしさや喜びを知ることができました。
 同時に、テレビや雑誌の取材、また、様々な記念コンサートで演奏する機会をいただきいろいろな経験をすることができました。

4、 パリ国立音楽院に13歳で入学され、周りの学生はもちろん年上ばかりでしたでしょう。戸惑いなどはありませんでしたか?学校ではどのような勉強をされましたか?
 パリ国立音楽院に入学した時は、周りは年上の人ばかりで、今まで味わったことのない空気を感じました。ただフランスでは、学生同士では年齢の上下関係はありませんから(逆に日本の先輩後輩という関係は難しい)、すぐになじむようになりました。昨年卒業してディプロムを取りましたが、在学中はバイオリンのレッスンの他に音楽史や音楽理論、グレゴリオ聖歌、室内楽、オーケストラなどを学びました。
 学生生活自体はとても自由で楽しいものでした。
反面、自分自身の中では常に自分の音楽を求めて悩んだり苦しんだりもしました。
 音楽院には音楽学部とバレエ学部がありますが、特にバレエの方は一年ごとに在籍審査という厳しいシステムでした 。


3才・ロンドンにて


8才 バカンス中、田舎の屋外で練習


13歳 アヴィニョンにて
(アヴィニョン国際コンクール優勝の時)

5、2002年ロン=ティボー国際音楽コンクールに史上最年少で優勝し世界から注目されたのですが、その後何か変わりましたか?
  優勝した当時はまだ16歳で、何かが変わるという実感は正直ありませんでした。ただ各国各地からの演奏依頼の数が急激に増えてとても忙しくなったことで、それまでの生活のリズムががらりと変わりました。

6、コンサート、演奏会などは年に何回くらいありますか?
  毎月、日本かヨーロッパ各地での演奏会が入っています。
今年は特にドイツでのリサイタル、室内楽、オーケストラとの共演が多く入っています。
演奏旅行がない時は、次の演奏会のために準備している曲や課題にしている曲について、音楽的な意見やアドバイスを頂くためにいろいろな先生方を尋ねて、スイスやオランダに出かけたりしています。


パリ・シャトレ座にて フランス国立管弦楽団と
7、 今年は、モーツァルトの生誕250年で、記念の演奏会が多いことでしょうね。
どんなイベントに参加されましたか?またこれから予定がありますか?

  モーツァルト関連では、5月3日と4日に東京の国際フォーラムで行われる「ラ・フォル・ ジュルネ ・オ・ジャポン〜モーツァルトとその仲間たち〜」に出演します。また、7月はオーストリアの「ロッケンハウス・フェスティバル」で、ギドン・クレーメルらとモーツァルトのクインテットやカルテットなどを共演します。
  モーツアルトは大好きです。モーツアルトのメロディーのシンプルな美しさにひかれます。清らかでけがれのない天上の音楽かと思うと、突然おどけてみたり、何かいたずらっ子のような無邪気さも、モーツァルトには感じます。
  また、今年はモーツァルトの生誕250年だけでなく、ドイツの作曲家シューマン(没後150年)、ロシアの作曲家ショスタコービッチ(生誕100年)なども記念の年にあたります。
先日、あまり演奏される機会のないシューマンのバイオリン協奏曲をドイツのオーケストラと演奏旅行をしましたが、各地の公演とも聴衆の皆さんに大変喜んでいただきました。ショスタコービッチは、来月ドイツで、やはりギドン・クレーメル、ビオラのユリ・バシュメットと室内楽で共演します。
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次回へつづく
【back number】 vol.1 パリは私を放っておいてくれる街 平沢淑子さん
  vol.2 パリのエネルギー源は人間関係 芳野まいさん
  vol.3 エール・フランスパイロット 松下涼太さんに訊く
  番外編 ワイン評論家 “ジャン・マルク・カラン“に訊く
  vol.4 全てが絵になるパリの景色の中で 寺田朋子さん
  vol.5 マダム・ボ−シェに聞く
  vol.6 日仏交流の最前線で
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