パリで活躍する素敵な方々にインタビューし、それぞれの「モンパリ」をお聞きします。



セ・サンパ
感じいい!親切!ちょっと贅沢!「セ・サンパ」とパリジャンは表現します。そんなサンパなパリを、ほぼ毎週更新でご紹介しています。
光を求めて  
その2  ビザンチン伝統のイコン 2008.01

 みなさんは、「イコン」というものをご存知でしょうか。ギリシャ語で「像」という言葉に由来する「聖像画」のことです。特に東方正教会の伝統で大切にされてきたテンペラ絵の具による板絵のことを指します。
今回、「パリに生きる」にご登場のマリー・ジョゼ・ラヴィさんはフランスの女流画家ですが、イコン作家の一人でもあります。
パリとギリシャのパトモスを往復しながら、精力的に活動を続け、現代イコンビエンナーレ展や、聖画フェスティバルに参加、2007年も11月に開催されたパリのユネスコにおけるフランス正教会40周年記念展覧会に出品しました。今回はクリスマスにちなんで、「キリスト降誕」祭のイコンについて説明しつつ、イコン作家への道のりについてお話しいただきました。

マリー・ジョゼ・ラヴィさん
1959年パリ生まれ。パリ第4大学―ソルボンヌで文学博士号取得。ルーブル博物館付属美術学校で古典絵画描法を学んだ後、近代聖像画アトリエの中心的存在の一つである、オランピア修道女のアトリエでイコン画法を学ぶ。現在は、パリのアトリエの他、ヴェニス、ローマ、パトモス島にもアトリエを持ち、水彩、パステル、油彩、テンペラ等を使いさまざまな作品を発表している。マリア・ラヴィという雅号はイコン作家としてのものである。
 ■ Interview のつづき インタビューのはじめへ

9、 (キリスト降誕祭のイコン の解説のつづき)
   ロバと牛がいますね。

  新約聖書にはロバも牛も書かれていませんが、旧約聖書の預言者ハバキュック(第 3 章 2 節)とイザイ(第1章 3 節)が書いています。

10、 主要場面の周りに他の場面が構成されているわけですね。
  はい。左から右に、中心場面の周りを回転して展開する動きの中にいろいろな場面が読み取れます。左上には、星を崇拝するペルシア人風の装いの博士たち。博士たちは星に導かれ道を辿りつつあり、宇宙の王を礼拝するためにやってきました。降誕祭のコンタキオン(賛美歌)には「博士たちは星とともに歩む」とあります。
 「この同じ地域に、野中で羊の群れを見守って夜を過ごす羊飼いたちがいました。主に仕える天使が彼らに現れ、主の栄光は彼らを光で包みました。その時彼らは非常に恐れたが、天使が彼らに言った、恐れることはない。私はあなた方に全人類に大きな喜びとなるよい知らせをもたらしに来たのだから。今夜、ダビッドの街にあなた方のために救世主、主、キリストが生まれた」ということで、右側には羊飼いたちが書かれています。
 主を見分ける徴は、ルカが書きました。「秣桶の中に産着に包まれた赤子を見つけるだろう」(第2章8−11節)

11、 右下の産湯の場面は?
 文献的な起源はありませんが、産湯はキリストの人性を示しています。

12、 そして左下に老人が見えますが。
  この場面はヨセフの懐疑とみなされています。元々はこの人物は羊飼いの一人で、天使のもたらす良き知らせを聞いていましたが、徐々に今の場所に移動しました。というのもイコンは一日で出来上がったものではないからです。ちなみに、降誕祭の最初の表現は 4 世紀初期に遡ります。

13、 降誕祭のイコンは、さまざまな時空間に展開する場面が合わさっているのですね。
  はい。博士たち、天使たちと羊飼いたち、産湯、ヨセフ、生神女と赤子という5つの場面を並べることででき上がっているわけです。

14、 ところで、イコンの書き方の特徴を一言で言うとしたら?
  テンペラ技法で書くということです。テンペラは、油彩が始まる前、木の板にイコンを書くために用いられていた古典的な描法です。顔料をすりつぶし、卵黄と混ぜて絵の具を作り、それを水で薄めて使います。

また、本物の金、24金の箔を使います。天を象徴する金です。

15、 イコン以外の画家としての活動は?  
パリで最初の個展が1997年ですが、その後99年にヴェニスで、2000年にローマで、そしてそれから、またパリで・・・と。最初に勉強したのは、油彩による古典技法でしたが、今は、油彩だけでなく、水彩、パステル、木炭なども使って描いています。
(MJLのHP)www.galerielavie.com
(ギリシャイコンHP) www.icones-grecques.com

16、 パリ、ローマ、ヴェニス、パトモス島に住んでいらっしゃいますが、パリジェンヌとしてパリはお好きですか。
パリは文化的に限りなく豊かな都市です。世界中の人々を受け入れていますが、そういった小さな要因がとても大きな可能性をもたらしています。人々はパリでいつも何かを作り出しました。そしていつでも創作意欲をかきたてられる。パリとはそんな街です。

17、 パリのどのようなところがお気に入りですか。もしお勧めの場所があれば教えてくださいますか?
私はパリの美観が大好きです。統一された建造物や大きな並木道。それから、セーヌ川に沿って歩いたり、サン・ルイ島を闊歩したり、カルティエ・ラタン(学生街)の小道に紛れ込んだり、公園の木々を眺めたりするのも好きですね。例えばビュット・ショーモンやモンスーリ公園、リュクサンブール庭園、家の近くならパレ・ロワイヤル、もちろんルーブル宮も、です。パリはロマンティックです。世界で最も美しい街のひとつですよ。
(パリ市のHP公園関連)
http://www.paris.fr/portail/Parcs/Portal.lut?page_id=8005


  キリスト降誕祭のイコン


イコン 聖アントニウス


2頭の山羊


ギリシャの風景


ギリシャの風景
マリー・ジョゼ・ラヴィさんの、イコン作家としての精神性と、普通の画家としての豊かさを垣間見た気がします。そしてイコンとは何か、ということがおぼろげながら分かりました。イコンにこめた降誕祭の意味を読み解くことも、貴重な体験でした。これからは宗教画を観る目も変わってきそうです。

インタビューのはじめ
【back number】 vol.1 パリは私を放っておいてくれる街 平沢淑子さん
  vol.2 パリのエネルギー源は人間関係 芳野まいさん
  vol.3 エール・フランスパイロット 松下涼太さんに訊く
  番外編 ワイン評論家 “ジャン・マルク・カラン“に訊く
  vol.4 全てが絵になるパリの景色の中で 寺田朋子さん
  vol.5 マダム・ボ−シェに聞く
  vol.6 日仏交流の最前線で
  vol.7 パリで育ち、世界に羽ばたく 山田晃子さん
  vol.8 光に魅せられて 石井リーサ明理さん
 

vol.9 音楽の都・パリのピアニスト ジャン・ルイ・ ベイドンさん

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