5、実際に現場に数十回足を運んで描かれる、ということですが、写真で撮って写すのとはどう違うのでしょうか?
うん、写真だとやっぱり描けないな。写真っていうのは、以外とデータがないんだよ。こういう所の影がどうなって…なんていうのは消えてしまって、ただ印象をぱっとつかまえているだけでしょ。雰囲気で描くなら、写真で事足りるわけだけど、ここはどうだったか、この線がどんな風になっているのかということも細かく描きたい、物は物がわかるように描きたいなぁと思って。「写真ぐらい嘘はない」っていう。だから、写真家が一番に、僕の絵を見て驚いたよ。
写真で撮ったものを見てやる人もないことはないけれど、結局、目も体も壊してしまう。写真からデータを写すのは、ものすごく神経を使うんだ。逆に、その場に通って見ながらやった方が楽。カメラで撮ったら全てが撮れていると思うけれど、じゃあここのデータはどうなっている?と思うと、そこをまた拡大して撮らないと、そこの関係がどうなっているのか、というのはわからない。影の部分は、映っていないからね。1枚の絵を描くのに、何百枚って写真を撮って、それをそばに置いて見ながら、とんでもない作業になる。だから現場で、この線の上はこれだっていうのを決めてくるんだ。ある物を全部、自分の絵に必要なデータを全部、集めてくるんだね。今日も、これから街に行ってきますよ。
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日仏交流150周年記念特別企画展への出品作品より
『Opera Garnier de Paris パリ・オペラ座(ガルニエ)』
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