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2003.12.31 |
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「北京ヴァイオリン(L'enfant au violon)」
チェン・カイコー監督が中国に帰って来た! |
中国第五世代の若手監督として、国際的に高い評価を得た後、93年「さらばわが愛・覇王別姫」で見事、中国映画として初のパルム・ドールを受賞したチェン・カイコー監督。2001年に「キリング・ミー・ソフトリー」でハリウッドに進出しましたが、本作「北京ヴァイオリン」で再び中国に帰って来ました。
「北京ヴァイオリン」は、13歳のヴァイオリン少年とその父の心の交流を中心に、急速な発展を続ける北京の市井の人々の生活を描いた感動作。映画全編を彩るヴァイオリン音楽の選曲も素晴らしく、少年が泣きながら父のために奏でる、チャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲ニ長調」の音色は、観客の心をぐっと鷲づかみにします。
美しい水と自然に囲まれた、中国南部の田舎町、鳥鎮。息子、チュンのヴァイオリンの才能を伸ばそうと、コツコツ貯めたお金を毛糸の帽子に隠し、息子を連れてはるばる北京に向かう、父リウ。田舎育ちの2人に、大都会、北京の生活は厳しい。しかし、息子の才能を信じ、ビルの窓拭き、出前から大工仕事までして、息子のレッスン費用を捻出する父のお陰で、チュンは著名な師のもとで、戸惑い悩みながらも国際コンクール出場を目指す。世知辛い世の中で荒みきった人々の心を、リウの息子に対する「無償の愛」が次第に変えていく・・・。
13歳のヴァイオリン少年を演じた、タン・ユンは、実際に6歳からヴァイオリンを始め現在も音楽学校に通う本物のヴァイオリン少年。監督が国際コンクールで発見して今回のチュン役に抜擢されました。彼の言葉すくなにこちらをじっと見つめる表情、ヴァイオリンを弾く時の繊細さと力強さ。幼い頃から厳しいレッスンに耐えてきたタン・ユンならではのリアリティのある演技です。
ともすればベタっとしたものになりがちな息子と父の絆物語を、淡々とリアルに描き、さらっと表現した、監督の力量に脱帽です。「馬鹿」がつくほど、正直でお人よしの父リウが見せる、真っ直ぐな笑顔に、フランス人観客も号泣。上映中、あちこちで大きな音で鼻をかむ人続出でした。お出かけの際は、ハンカチとサングラスをお忘れなく・・・。 |
「北京ヴァイオリン」(仏題:L'enfant au violon)
脚本・監督・出演: |
チェン・カイコー(『さらば、わが愛/覇王別姫』) |
撮影: |
キム・ヒョング(『春の日は過ぎゆく』) |
出演: |
タン・ユン/リウ・ペイチー(『秋菊の物語』『西洋鏡』)/ワン・チーウェン(『べにおしろい』『始皇帝暗殺』)/チェン・ホン |
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2002年/中国/カラー/117分 |
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