トランクを巡る150年以上の <ヴィトン史> を紹介するエクスポジションが、カルナヴァレ美術館にて開催されています。
1835年、14歳のルイ・ヴィトンは、フランス東部ジュラ県の小さな村からチャンスを求めてパリへやって来ました。幼い頃から、製粉業・指物師の父親の傍らで道具を手にしていたことが功を奏し、旅行に出かける富裕層の荷造りをする「トランクメーカー ― 包装職人」としてとある企業で働き出したのが1837年。1852年にはナポレオン3世妃ユジェニーを担当するようになって、ルイの仕事ぶりは富豪階級の間で一躍有名になりました。蒸気機関車、蒸気船などの発達で、富裕層、貴族にとっては外国旅行が次第に気軽になりつつあった時代、ルイは早くから、機能的な旅行鞄の必要性を感じるようになっていました。
そして「ルイ・ヴィトン」ブランドを立ち上げたのは1854年のこと。記念すべき第一号店は、ヴァンドーム広場に程近い、ヌーヴ・デ・キャプシーヌ通り(現キャプシーヌ通り)にお目見えしました。この時に、丸く貼り出した蓋のために重ねることができなかった従来のトランクに代わり、蓋が平たく、機能的で上質なトランクが発表されました。
本展で展示されているトランクの数々は、遡ること1860年代からの時代物。とりわけ100年以上前から存在した「ダミエ」や「モノグラム」を目にすると、今日、第一線で生き続けるブランドロゴのパワーを感じます。
ルイ・ヴィトンを代表するその「モノグラム」は、模造との戦いの証でもあります。
チェック地の「ダミエ」は1888年に特許を取得していましたが、模造品が続出。1896年にメゾンのイニシャル「L」と「V」が絡まるロゴと、菱形の中に四弁の花をあしらったモチーフを組み合わせ、ひとつのパターンが作られました。会場には1905年の商標登録証が展示され、また、モノグラム発案に影響したとされている「ジャポニスム」として、LVコレクションから、鷹の羽や木瓜の家紋入り着物や、幟(のぼり)が並べて展示されています。
また、トランクは用途に合わせ柔軟に形を変え、工具箱、ティーセット、引き出し付きクローゼットトランク、鏡やボトル、刷毛などがぴったりと収まったドレッシングボックス、折りたたみ式デスク・・・などなど、独創的な世界が展開します。こういった斬新なアイデアは、音楽家ストコフスキー、ストラヴィンスキー、映画人サッシャ・ギトリ、ソプラノ歌手マルト・シュナル、といった世界の著名人達を顧客に取り込み、彼らの“出張”や、興行を陰から支えました。
ルイ・ヴィトンブランド誕生後、緻密な職人技が生み出す最高のクオリティはパリの旅行文化発展に大きく貢献しました。今日では世界をリードするモードブランド、またメセナ活動にも積極的なLVMHグループとして君臨しますが、そうしたヴィトンの原点と、現代までの変遷の歴史が見て取れるエクスポジションです。
VOYAGE EN CAPITALE, LOUIS VUITTON ET PARIS
エクスポジション・サイト:
http://www.louisvuitton-voyageencapitale.com/
2011年 2月27日まで開催
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トランク(1854~1896)
Malle en toile gris Trianon(1854), malle en toile rayée(1872), malle en toile à damiers(1888), malle en toile Monogram tissée(1896)
COLLECTION LOUIS VUITTON / ANTOINE JARRIER
ティーケース(1926)
Tea-case en cuir gainé
©Louis Vuitton Collection / Patrick Gries
工具ケース(1910)
Coffre Etau en toile Monogram
©Louis Vuitton Collection / Patrick Gries
折りたたみデスク ストコフスキーモデル(1930)
Secrétaire Bureau modèle Stokowski en Toile Monogram
©Louis Vuitton Collection / Patrick Gries
カール・ラガーフェルドのアイポッドケース(2004) Boîte Ipod pour Karl Lagerfeld ©Louis Vuitton / LB Production |