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ベルシー地区 その2:シネマテークとエキスポ[ルノワール、ルノワール] |
新しいシネマテークがベルシーにオープンしたことは、前号でも書いたが、ベルシーは、ミッテラン大統領のパリ東部再開発プロジェクトの一つの地区で、大蔵省や総合スポーツセンターが出来てすでに15年以上経つ。
シネマテークは、映画フィルムを保存する目的と上映の為に、もともとはトロカデロのシャイヨ宮殿内にあった。しかし1997年に火災にあい、それがきっかけとなって、新しいシネマテークがベルシーに誕生することになったのである。
9月末にオープンしたシネマテークは、ベルシー通りとベルシー公園に挟まれたところにあり、入り口前の広場はレナード・バーンスタインという名前である。建物はポストモダンなのだろうが、現代風にすっきりしているのではなく、中世の建物を新しくアレンジしたような、または小人のアパート群のような不思議な雰囲気の建築である。訪れたことのない人に、その間取りを説明することなど不可能だと思う。
ともかく中には3つの上映サロンがある。メインのアンリ・ラングロワ(初代シネマテーク館長の名前)会場は450席、ジョルジュ・フランジュ会場は140席、ジャン・エプスタイン会場は100席足らずである。後者2つはフランスの映画監督の名前だ。映画上映は午後2時前後から10時半頃までで、各会場で3本ほど上映される。
シネマテークが他の映画館と違うのは、商業ベースに乗っていない映画や、発展途上国制作のもの、実験映画、短編などを上映していること。また、一人の映画作家の回顧上映や特定の国の映画100本など、営業ベースでは考えられない、利益を無視した興行方針を実行していることで、さすがである。(随分前だが、日本特集として無声映画から100本を上映していて、日本では得られない醍醐味を味わったことがあった。)現在は、ルイ・マル、俳優のマイケル・ケイン特集をしている。
そして映画ファンの為には年間120ユーロで映画見放題のカードがある。1ヶ月10ユーロで何本も映画が見られるのだから、とても嬉しい。
そして今、オープンを記念して[ルノワール、ルノワール]という展覧会が開催されている。
1930年代から50年代にフランス映画界に金字塔を打ち立てたジャン・ルノワールは、印象派の袋小路を抜け出て、多くの美しい肖像や裸婦を描いた、ピエール・オーギュスト・ルノワールの息子だが、父ルノワールの絵と、息子ジャンの映画を並べることで、観客に、親子の比較や、息子が受けた父の影響を見てもらおうという、今までにない趣向である。勿論、本来映画は暗いところで見るものだし、絵はある程度明るくないと鑑賞できないので、その辺の照明の度合いがデリケートではあるが・・・。
自伝風の映画『牝犬』は画家が主題になっており、『陽だまりの裸婦』の絵には映画の『草上の昼食』、『ブランコ』の絵にはモーパッサンの短編が原作になっている『ピクニック』が、『ムーラン・ド・ラ・ギャレット』には『フレンチ・カンカン』の映画が並んでいる。映画スクリーンには、父ルノワールの影響がよく見られるシーンが3分ぐらいずつ、繰り返して流されている。
[ルノワール、ルノワール]のエキスポは2006年1月8日まで。
51、rue de Bercy 75012 Paris
メトロ:ベルシー、またはクール・サンテミリオンから徒歩で5分 |
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